氷河洞窟のツアーに参加した時に、道沿いに生えている紫の花は侵略的外来生物で、問題になっているという話があった。
そこで、アイスランドの外来生物問題について調べてみた。
アイスランドの外来生物の現状
アイスランドにいる陸生哺乳類のうち、在来のものはホッキョクギツネのみで、それ以外の陸生哺乳類はすべて外来種とされている。
昆虫についても、人が持ち込んだものが多く、今日アイスランド固有種とされている多くの種ですら人間の活動によってもたらされたものらしい。
物流の増加により、非意図的導入は増加しているものの、アイスランドの環境に適応できるものは少なく、定着したものはほとんどない。ただ、気候変動の影響でアイスランドに持ち込まれた場合に定着できる種が増えていることで外来生物問題のリスクが高まっている。

侵略的外来動物
アイスランドで侵略的外来種とされている動物はミンク(Mustela vison)、スペインナメクジ(Arion vulgaris)、サカマキガイ(Physella heterostropha)、シロオビマルハナバチ (Bombus lucorum)の4種ある。

ミンクは1931年に毛皮養殖のために初めてアイスランドに持ち込まれ、それが檻から逃げ出したものが定着したらしい。今では国中でミンクが見られ、特にアイスランドの鳥類に悪影響を及ぼしているらしい。
スペインナメクジはヨーロッパで広く問題になっている侵略的外来種らしく、園芸や庭園への被害が懸念されているらしい。(現時点ではアイスランドではまだそんなに問題になっていない)
サカマキガイは観賞用に持ち込まれ、湖に導入されたことで、在来の巻貝と競合している可能性があるらしい。
シロオビマルハナバチは日本で特定外来生物に指定されているセイヨウオオマルハナバチと近縁の種で、アイスランドには1970年代に非意図的に導入され、自然環境にも分布拡大しているらしい。この影響で、前からいたヒメマルハナバチ (Bombus jonellus)の個体数が減少しているらしいが、この姫マルハナバチも入植初期に持ち込まれた外来種の可能性が高いらしい。
侵略的外来植物
アイスランドで侵略的外来種とされている植物はヌートカ・ルピナス(Lupinus nootkatensis)、シャク(Anthriscus sylvestris)、ヒーススターモス(Campylopus introflexus)の3種ある。

ヌートカ・ルピナスがツアー中に見た紫の花で、元は緑化目的で導入されたが、繁殖力が高すぎてほかの植物を駆逐しているらしい。
シャク(杓)は日本では食用や薬用に長く使われている植物だが、アイスランドでは園芸用に持ち込まれたものが自然環境に広がり、ほかの植物との競合が問題になっている。
ヒーススターモスは旅行者の靴底などに付着して非意図的に導入されて地熱地帯に定着しているらしい。
アイスランドの外来生物に関する法規制
外来植物種の輸入、栽培、流通に関する規制
この外来植物の輸入・栽培・流通に関する規制は日本の外来生物法とはかなり仕組みが違っている。
規制の範囲
一番の違いは、すべての植物種について定めがあることだと思う。
日本の外来生物法で規制されているのは主に特定外来生物で、あとは輸入の規制がある種も定められているぐらい。
一方でアイスランドの外来植物種の輸入、栽培、流通に関する規制ではすべての植物種が検討の対象になっている。(リストA,リストBに掲載されている以外の外来植物の取り扱いについてはよくわからなかった。)そして外来植物(在来種として付属書に明記された種以外のすべての植物種)を輸入する際にはすべて届け出が必要らしい。
ホワイトリスト
リストBのようなアイスランドで栽培可能な外来種のリスト(ホワイトリスト)が存在するのも日本との大きな違いだと思う。
これらの種は栽培および流通に関するガイドラインに従い、条件を守れば、保護地域、特別保護を受けている景観地域、および海抜400メートル以上の地域以外では栽培可能らしい。
また、現時点では栽培可能とされていても、ある種がアイスランドの自然環境において過度に侵略的になっていることが明らかになった場合、その種はBリストから削除される可能性があるらしい。
このリストに新たに登録するには、申請者が栽培の利点とリスクに関する評価等を提出する必要がある。申請者が評価をしないといけないのは日本で未判定外来生物を輸入する際の手続きと異なっているんじゃないかと思う。

おまけ
温室での外来植物種の栽培にはこの規制が適用されないのは興味深い。音質での栽培というのは、エネルギー源を利用して、その地域のその時点の平均気温を大幅に上回る温度に保たれた閉鎖空間で栽培を行うこととされており、アイスランドの寒冷で過酷な自然環境が、外来生物の定着をかなり防ぐことが反映されているんじゃないかと思う。
ちなみにリストAに掲載されているのは以下の種。日本でも規制されている種もあれば日本原産の種もある。
- Azolla filiculoides,
- 日本で特定外来生物に指定されているアゾラ・クリスタータ(A. cristata)と同属
- Bunias orientalis,
- 日本では特に話題になっていないが、ヨーロッパでは問題視されているらしい
- Elodea canadensis, カナダモ
- 近縁のオオカナダモ・コカナダモが生態系被害防止外来種リストに掲載されている
- Fallopia japonica, イタドリ
- 日本では昔からある有用植物。食用や薬用に使われるが、世界の侵略的外来種ワースト100に選出されている。
- Fallopia sachalinensis, オオイタドリ
- 日本原産でこれも食べられるが、これも世界の侵略的外来種ワースト100に選出されている。
- Galinsoga quadriradiata, ハキダメギク
- 日本には大正時代ごろに持ち込まれ、全国に広く分布しているがそこまでも問題になっているわけではなさそう。。
- Heracleum persicum,
- 日本では特に話題になっていない。
- Heracleum mantegazzianum, バイカルハナウド(ジャイアントホグウィード)
- 2025年に北海道大学構内で見つかり話題になった。(北海道庁のページ)
- Heracleum spp., ハナウド属の全種
- 日本にはハナウドとオオハナウドが在来のハナウド属としてある。地域によっては、春先の柔らかい若葉や茎(うど菜・ハナウド)を山菜として天ぷらや和え物にして食べる文化があるが、茎を折ったり傷つけたりした際に出る汁が肌に付着した状態で、直射日光(紫外線)に当たると、激しい皮膚炎や水ぶくれ(光線過敏症)を引き起こすらしい。
- Impatiens parviflora,
- 日本では特に話題になっていない
- Petasites hybridus, セイヨウフキ
- 日本では外来種としては特に話題になっていないが、薬用利用に関して厚生労働省から(利用を控えるよう)注意喚起が出ている
- Senecio inaequidens, シンコウサワギク ダイコクサワギク
- 日本にも定着しているが、そこまで問題視はされてなさそう。
- Solidago canadensis,
- 日本にも定着しているが、そこまで問題視はされてなさそう。
- Solidago gigantea, オオアワダチソウ
- 日本には明治時代に侵入し広く全国に分布。特に北海道ではセイタカアワダチソウより優占。生態系被害防止外来種リスト掲載。
- Spartina anglica.
- 日本ではスパルティナ属の全種が特定外来生物に指定されている。
考察
これはアイスランドに生息する種が少ないからできていることなんだと思う。また、入植からの歴史が浅いことも影響しているのだはないかと思う。
例えば、林野庁によると、日本には5565種の植物があり、八王子市の高尾山の森林だけでも1500種ほどの植物が発見されているらしい。
また、日本に人が来たのは数万年前と考えられており、遠い昔のことも考えると、いま日本にある植物が外来種なのか在来種なのかを一つ一つ調べることは現実的ではない。
一方で、アイスランドで在来の植物として明記されている種は440種であり、日本とは桁が違う。また、アイスランドに本格的に人が住み始めたのは8世紀ごろということで歴史の調査も日本と比べると容易だと考えられる。
このような理由から日本でアイスランドのようにすべての植物種を規制することはできないのは仕方ないと思う。

動物輸入法

機械翻訳がうまくいかなくていまいちよくわからなかった。
原則としてはいかなる種類の動物及びそれらの遺伝物質も国内に輸入することを禁じたうえで、例外として輸入できる場合を定めている模様。
自然保護法他

外来生物に関する規定は自然保護法第41条にもある。すごくざっくり書かれているだけで具体的なことはよくわからなかったがとにかくアイスランドでは、アイスランド環境庁の許可がない限り、外来種の生物を輸入または拡散することは禁止されているらしい。
また、外来種の輸入許可を申請するには、申請者は、当該種が侵略的外来種となるリスク、または生物多様性にその他の悪影響を及ぼすリスクを網羅したリスク評価書を提出する必要がある他、手続きには98000ISK(13万円弱)の手数料がかかるらしい。

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